
黒沢清監督
中谷美紀、豊川悦司、安達祐実、西島秀俊
作家(中谷)はスランプで、体調も悪く、全然筆が進まないため、編集者(西島)に自然の中の家を探してもらう。そこに引っ越してきたが、ある日向かいの廃墟に男(豊川)がなにやら怪しいものを運び込むところを目撃する、という話。
黒沢監督は大好きだが、その分期待は大きい。いまいち評判にならなかったこの作品なので、ちょっぴり心配はしていた。しかし、全くその必要はなかった。全くの先入観なしに観たとしても、俺は5点をつけると思う。
これから観る予定がある人は、この下は読まないほうが、面白く鑑賞できるかもしれません。
日本人で一番好きな監督であると同時に、俺を唯一怖がらせるホラーを作る人でもある。この人の恐怖の表現は、完全に俺のツボにはまる。何もない壁を映しやがってよ。よく観たら、あーいるじゃねえか、ってのもある。そして、時々直接的にどかんと出してくる。怖がらせ方が、ベタじゃないのだ。前半の恐怖シーンは、画面を直視できなかった。右目だけで観たわ。清水崇とか中田秀夫とか、あいつらはおんなじことしかできないが、彼は一味違う。
いつものように、最初の方は怖い。安達祐実なのに怖い。でも、幽霊って、得体が知れないから怖いわけで、いろいろと説明がなされて、素性が割れてくると、出てきてももう怖くなくなるわけだ。
そのあたりから、この映画は、とんでもない方向へ向かう。毎回、良い意味で期待を裏切る映画を作るが、今回も、思いもよらないものを取り入れてきた。それは、ラブストーリーの王道みたいな展開である。完全にふざけてる。意図的にやってる。彼は、韓国純愛ドラマとか、ハリウッドのアクション映画の恋愛に、完全に喧嘩を売っている。喧嘩を売るというか、ほんとに映画が好きなんだろうなと思う。
あと、ミイラとの格闘で、「動けるんだったら、最初からそうしろ!」って言うあたりとか、すげえよな。今回の映画では、「セリフ」もいい感じだよなあと思うことが多々あった。基本的には映像が好きで、今回も今までに観たことがないようなCGや、「ちゃんと斬新」なカメラワークなんかを繰り出してきているが。
そして、ラストシーンは、ほんとに大爆笑した。あの前フリのところに、あんなにいいタイミングであんなことが起こったら、観てるだけでも面白いが、でも、よく考えてみると、安達祐実が左右間違ってたんだぞ。今までに見た日本映画の中で、一番面白いラスト1分。
そう、恐怖と大爆笑を、なぜか両方、一連のものとして感じさせてくれるのが、すごいところだ。別に、人の感情って、嬉しいとか悲しいとか、勝手に定義をして、常識を身につけるにつれて学んできたものであり、もともとは嬉しいと悲しいは対極ではなく、その中間の感情とかがあるはずなのだ。こういう映画は、そこらへんをついてくるから、どうしても面白いと思ってしまう。
演技をしないことがいい演技だと思ってるふしのある西島さんが、俺は好きじゃないんだが、この映画では良かったね。母親みたいに優しい声を出す中谷美紀の演技を見ることもできる。